匂いとか香りとか。

最近ひどく寒い。暦どおりだ。肉眼で星が良く見えるくらいに空気が澄んでいて結構なことだけど、個人的に少々困っている。すきなひとを思い出させる匂いや香りが鼻につくから。


朝、駅のホームの喫煙所を通り過ぎるとき、すきなひとと同じ煙草の香りが鼻をくすぐり、思わず振り返ってしまう。こんなとこにいるはずもないのにと頭では理解しているのに、だ。まともに吸ったこともないのに、吸えもしないのに、体にもよくないのに、「自分で吸おうかな」と考えてしまう自分が嫌になる。


自分が普段からほんの少しつけている香水の香りが、なぜかいつもより余計に鼻につく。その胸に顔を埋めて、すきなひとの匂いをいっぱい吸い込んで、熱に包まれた瞬間が、今さっきだったかのように思い出されて、どうしようもなく途方にくれる。




すれ違いが続いて逢えなくて苦しいのは、ひどく寒いせい。




春よ来い、早く来い 。



まがいものでもかまわないから。